ドイツ・ライプツィヒに行くことがあったら是非試してもらいたいお菓子を紹介しますね。
今回ご紹介するお菓子は、ライプツィガー・レアヒェ(Leipziger Lerche)。日本語に直訳すると“ライプツィヒのひばり”という名のタルトです。
街の中を散策している際、どのケーキ屋さんのショーウインドーでも結構幅をきかせているスイーツを発見しました。お店によって僅かな違いがあるものの、上部に生地でバッテンが描かれている(?)焼き菓子です。
ドイツの他の町では目にしたことがないので、「これはきっとライプツィヒ名物に違いないから買ってみなくっちゃ」と思いながら、街見物しつつめぼしいお店をチェック。なんとなく良さげなお店に入りました。
そこで、そのタルトの名前がライプツィガー・レアヒェであることを知り、これがライプツィヒ銘菓であることを確信しました。こんがりきつね色に焼けていてこうばしくて美味しそう!テイクアウトで3つ購入し、コーヒータイムを楽しもうと意気揚々とホテルに戻りました。
ライプツィガー・レアヒェて何?
一言でいうと、パート・シュクレ生地に少量のジャムとマジパンフィリングを詰めて焼いたタルトです。
きれいな鳴き声で春告げ鳥としても知られるひばりは、ヨーロッパでも詩に詠われたり、さえずりを旋律に取り入れた音楽が作られたりと、人に親しまれる野鳥であると同時に、中世以降は珍味として好んで食べられていたそうです。
ライプツィヒ周辺は主要なヒバリの産地で、狩猟期間中には毎年膨大な数のヒバリが捕獲されていました。地域内のみならず、他地域や国外にも輸出するほどだったとか。
詰め物をしたヒバリのローストは人気料理で、18~19世紀に出た有名な料理本には必ずと言っていいほどレシピが掲載されていたそうです。
ところが、19世紀に入って、動物愛護運動の意義が認識されるようなり、その影響力が強くなるとともに、ひばりを捕獲して食用にすることへの批判が高まりました。動物愛護団体はひばりを狩猟対象動物リストから外すことを要求。乱獲や気候変動の犠牲でヒバリの数が大きく減少したことなどから、1876年に当時のザクセン王アルバートが、ついにヒバリ禁猟令を発布し、ヒバリを食べることができなくなりました。
はっきりとした記録はないそうですが伝承によると、本物のヒバリ肉の代わりにとパン職人が考案したのが現在のライプツィガー・レアヒェの始まりだそうです。どう見ても考えても、ヒバリ肉の代わりにはなりそうもないお菓子ですが、発売されると瞬く間に人気商品になったとか。年々形は簡略化されてきたものの、100年以上にわたりこのタルトと名前が受け継がれてきたということです。
タルトは紐で縛られて羽がはみだしたヒバリの姿(上部に十字にはりつけられた短冊状の生地がヒバリを縛っていた紐、中の赤いジャムが心臓)を模しているんだそうです(またはヒバリの巣を模しているとも)。
ということで、コーヒータイムを始める前に、このお菓子について調べたところ、なかなかに由緒正しいお菓子であることがわかりました。が、ちょっとショックだったのは、このタルトの中身がマジパンだということ。
マジパンはドイツ語ではマルツィパン(Marzipan)と呼ばれる、砂糖と粉末にしたアーモンドを練り合わせて作った和菓子の練りきりのような食感の食べ物で、独特の風味(杏仁豆腐のような香り)があります。嫌いというわけではないですが、ものによってはかなりの甘さと独特の風味のコンボが強烈なインパクトを与えてくれるので、少量ならともかく量が多いと苦戦しちゃうんですよね。
買ったヒバリちゃんは手乗りサイズですがそこそこ厚みがありずっしりとした重さが…。とりあえずはお試しで1個にしといたらよかったかも…と思いながら試食タイム開始。
恐る恐る口に運ぶと…「美味しい!!」サクサクほろりとしたタルト生地にしっとりとしたマジパンフィリング。マジパンの香りは強すぎず弱すぎず良い感じの風味が出ていました。少量のジャムのほのかな酸味がアクセントになっていて単調さを引き締めてくれ、素朴ながら予想以上に美味しいタルトでした。
名物にうまいものなしという諺がありますが、ライプツィガー・レアヒェにおいてはさにあらず。ライプツィヒ訪問の機会がありましたら、お試しください。
お店紹介(Handwerksbäckerei & Cafe Kleinert)
市内に複数店舗を展開するお店で、オリジナル(プレーン)の他に、ピスタチオ、コーヒー、チョコレートとバリエーションも豊富。更に、時期によっては季節限定フレーバーもあるとのことです。全種類それぞれに美味しかったです。
ばら売りの他、お土産用に包装されたものがあります。
左から、オリジナル(プレーン)、ピスタチオ、チョコレート
お店紹介(Cafe Konditrei Corso)
ライプツィガー・レアヒェを現在の形に完成させたといわれる1912年創業の伝統あるケーキ屋さん。
元祖ライプツィガー・レアヒェといえそうなこのお店のレアヒェは数種類の大きさ、パッケージのものがあります。今回はばら売りの小ぶりなものを購入しました。
甘さ控えめでじんわり美味しいレアヒェでした。
終わりに
さて、今回は初めての名物菓子の紹介です。
ドイツはそれほど地域ごとのはっきりとした名物菓子ってないのですが、今回ご紹介したライプツィガー・レアヒェは珍しくライプツィヒならではのお菓子でした。
このシリーズ続くかどうかわかりませんが、また面白いものがあったご紹介します。
もしライプツィヒに行ける日が来たらぜひ食べてみてください。