ティーチャーズのキーモルトとして名を馳せているアードモア蒸留所が送り出すポートフィニッシュによる Ardmore Port Wood Finish 12年。
レガシーやトラディショナルカスクといった定番とはやや異なる方向を向いたシングルモルトウイスキーです。
さて、今回はどんな世界を見せてくれるでしょうか?
アードモア蒸留所の紹介
アードモア蒸留所は1898年にケネスモント(Kennethmont)の近郊にアダム・ティーチャーによって設立されました。
スぺイサイドと書かれている資料も多くありますが、ラベルや公式サイトではハイランド・シングルモルト・ウイスキーとして紹介されています。
蒸留所は北部鉄道の最も高い場所、海抜600フィートに位置しており、また鉄道線路に近いことから、創業者アダム・ティーチャーはグラスゴーからアバディーンシャーのこの辺境の地まで必要物資を運ぶことができ、蒸留所の繁栄に貢献しました。
彼が夢を実現させた時からほとんど変わっていないこの蒸留所の水は、標高1,500フィートのノッカンディー・ヒルにある湧き水から汲み上げられています。
現在は8基のポットスティルで蒸留を行っていますが、2000年末までは石炭による直焚き蒸留を行っていたようですが、現在は主流である上記による加熱となっています。
また1976年の買収後は、独自のモルティング施設とカスク製造施設は廃止され、他社からの購入に切り替わりました。
アードモアで利用されているモルトはややピートの効いたモルトが使用されており、一般的なスぺイサイドのモルトウイスキーとは一線を画すちょうど良い風味を醸し出しています。
主にティーチャーズへのブレンド向けに生産しているため、年間生産量は520万リットルと非常に多いようです。
19世紀初頭にはアイラ島にもアードモアという蒸留所がありましたが、このアードモアとは名前以外には何の関係もありませんでした。
現在はご存じのようにサントリーグループに属しています。
Ardmore Highland Single Malt Whisky
Ardmore Port Wood Finish 12年について
今回紹介する12年は、アルコール度数46%とやや高めですが、バーボン樽での熟成後、ハーフポートパイプ(ポートワイン用の樽)で後熟されており、素晴らしい香りを放ち、ストレートで飲んでもきつさを感じないほど。それでいてほのかに感じるピート感が味わいを深めます。
このシングルモルトウイスキーは、ノンチルフィルターで12年間熟成され、100年前から同じ伝統的な蒸留方法で製造されています。
アルコール度数 | 46% |
フェノール値 | 12ppm |
着色 | カラメル色素による着色あり |
香り |
最初にイチゴや夏のフルーツの香り、胡椒の香りが来る。さらにオレンジ、シナモン、スパイスの香り 加水すると、赤リンゴ、クランベリーの豊かな果実のアロマが強まり、甘いハチミツとほのかなスパイスの効いた木の香りが伴う ポートの甘味、モルト、かすかなスモークなどが感じられ、さらにスパイスの効いたクッキーやフルーツなども感覚もある |
味わい | 甘い赤リンゴとハチミツ、ほのかにスモーキのニュアンスがある |
余韻 | 最初は滑らかで、長い余韻が続き、トレードマークであるアードモアのドライさで最高潮に達する |
我々の感想
我が家で人気の一本です。ポート樽でのフィニッッシュということで、香り、甘味ともに強く飽きの来ない味わいです。
レガシーやトラディショナルカスクをスタンダードだとするとポート樽仕上げのこちらはややイレギュラーに感じるかもしれませんが、ポートの甘味の裏にしっかりアードモアらしいスモーキーさもあり、同じモルトから生まれた兄弟ウイスキーであると感じられます。
色合いは、やや濃いめのルビーゴールドでポート樽による後熟の効果でしっかりとした色合いがでている(着色の影響もあり)。
香りは、甘いポート樽特有の香りと いちごジャムや果物の甘味、さらにリンゴやはちみつなどの香りも感じられる。少し加水していくとモルトの持つ香りやかすかなスモークの香りも出てくる。
味わいは、香りと同様にかすかなスモーク香を感じるが、オイリーな口触りであるがフルーツの甘味も感じる。
余韻は、力強いインパクトがとどまるが、その後はすっきりと消えていく感じ。
まとめ
もともとはTeachers(ティーチャーズ)向けのキーモルトであるウイスキーなのですが、シングルモルトウイスキーとしてもとてもハイレベルなつくりをしていると感じます。
サントリーからは今回紹介するポートウッドフィニッシュ12年は出ていないようですが、欧州ではほぼレガシーと同価格帯で売られておりお手頃な一本です。
かすかなスモーキーさがアードモアのモルトの楽しさ。ハイランドのおすすめの一本です。
次回は、同じアードモア蒸留所のレガシーとボトラーズであるシグナトリーから出ているアードモア10年(カスクストレングス、ビンテージ2009-2020年)を比べていきます。アードモアならではの楽しさを追求していきます。